会員のための交流・親睦会

パネル・ディスカッション ~一味違った商店街の秘訣に迫る&交流会~開催報告

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東京販売士協会常任理事 松崎 香澄

東京販売士協会では、昨年度に引き続き今年度も去る6月5日(土)に東商で「パネル・ディスカッション」を開催しました。今回は、「ニュー北町商店街振興組合」(NPO北町大家族理事長村上孝子様)、「上野中通商店街振興組合」理事長木村雄二様、「神田駅西口商店街振興組合」副理事長秋山利昭様をお迎えして開催しました。以下、各パネラーの基調講演からそれぞれ活性化への「一味違った商店街の秘訣」に迫ってみたいと思います。

パネルディスカッション写真1

●ニュー北町商店街振興組合

地域通貨で有名な「ニュー北町商店街振興組合」は、東武東上線の東武練馬駅から数分の旧川越街道に位置している典型的な近隣型の商店街です。街区を歩いてみると、近くに自衛隊の練馬駐屯地を控えているせいか飲食店を中心に60店舗で構成された商店街です。
平成12年に駅の反対側に大型店の出店が決まったことにより、商店街として緊急な対応に迫られたのでした。そこで考えたことは、「視点を変えて、地域の生活者の方に恩返し」をしようということで、次の3つの具体的な施策を実施しました。

第1は、高齢者支援事業「北町いこいの家」です。一人暮らしや、家に引きこもりがちのお年寄りを「カラオケ」や「うどんを打つ会」などで元気づけようということなのです。

第2は、北町から育児虐待を出してはいけないということで子育て支援事業「かるがも親子の家」を始めました。毎週30人ほどの若い主婦が集い子育ての情報交換をしています。

第3は地域通貨の発行です。これらの活動は、商店街会館で実施されており、商店街の奥様方が中心に支援活動を支えてきました。そして、この活動を継続的に実施するために、地域の方にも参画していただき、2001年にNPO法人「北町大家族」を立ち上げました。

そして、NPO法人として「地域通貨ガウ」を発行しました。ガウとは、かるがもの鳴き声からとった名称であり、支援事業に協力していただいた方への謝礼として支払っています。このガウは、商店街で通貨として使えるほかに地元信用金庫でも預金として積み立てもできます。現在ガウの発行残高は360万円にもなり、地域通貨として定着し商店街活性化への大きな原動力となっています。

パネルディスカッション写真2

●「上野中通商店街振興組合」(うえちゅん)

産学連携と広域連合構想で活性化を図る「上野中通商店街振興組合」は、上野「あめ横」と中央通りの間という恵まれた立地に位置しています。上野といえば「芸術の街」といわれる一方、「アメ横」に代表される「安売りの街」というイメージもありました。そこで、上野のイメージチェンジを図ることで商店街の活性化に結びつけるために3つの大きな施策を実施したのです。

第1は、「上野公園の歴史と文化を取り入れた街づくり」をねらって「芸術通り憲章」を作成して実施した4つのイベントです。
◆1◆ 上野動物園と提携して、絶滅動物を保護する「ニシローランドゴリラチャリティ」基金を商店街が中心になって設立。
◆2◆ 東京藝大と提携して、芸術祭りを商店街の街区にまで拡大して実施している「芸術まつり」。
◆3◆ 寛永寺と提携して、古い街を歩く「上野探索ウオークラリー」。
◆4◆ 上野公園の桜の開花予想をする「桜開花予想クイズ」を実施しました。

第2は、東京藝大の日比野助教授の参加を得て街路灯と「上中(うえちゅん)」のロゴマークのついたアーチが完成しました。これにより「アメ横」と並んで二つの商店街が周辺一帯に賑わいをかもし出しています。

最後は、地下鉄大江戸線の開通を契機に、「これからは広域の時代だ」ということで周辺商店街と連携して「上野商店街連合会」を設立して前述の4つのイベントを実施しています。これにより、例年7千件であった「桜の開花予想クイズ」の応募が1万7千件にも増加しています。また、都と区の連携により作成した「さくらマップ」も逸品です。これを見ても、商店街連合の効果があったと確信されます。

パネルディスカッション写真3

●「神田駅西口商店街振興組合」

街並みの美化と安心で活性化を図る「神田駅西口商店街振興組合」は、JR神田駅西口正面から西に街区を形成しています。バブル期には、大手企業が周辺ビルに入居していましたが、バブル崩壊以降は転出してビルの空き室率が上昇し、借入で建設されたビルなどは金融機関への返済が滞り競売物件となり、地域環境を無視するような業者(やみ金融、中国マッサージなど)が入居しました。
夜になると「違法客引き」、「違法な張り紙」、さらに飲食店のごみなどにより環境が著しく悪化してきました。そこで、商店街として街並みの美化と安心を狙って、次の4つの施策を実施しました。

第1は、99年に区の支援を得てカラー舗装を完成したが、数日でガムの汚れが目立ちました。そこで、03年に「高温・高圧洗浄機ねっとうくん」を導入、月1回組合員全員で清掃を実施しています。

第2は、都と区の支援を得て通行客へのBGMと商店街や公共機関の情報提供の放送を開始しました。これは、CM事業としても運営しています。

第3は、02年に区長、警察署長に「違法客引き・張り紙」追放の要請書を提出し、警察署、区職員、商店街を中心として「夜間パトロール」を実施しました。これにより、違法行為は大幅に減少しました。

第4は02年12月に区の支援により「防犯カメラ」9を台設置しました。これは「違法客引き」減少に大きな効果がありました。

このように、商店街だけでは限界のある課題を行政の支援を得て活性化を図っています。また、他の商店街では常に課題となっているチェーン店もほとんどが組合に参加しているのも特筆すべきであると思われる。

パネルディスカッション写真4