平成17年度エネルギッシュ・タウン-私の街-受賞4商店街 パネルディスカッション
東京販売士協会
東京都内の元気ある商店街を東京販売士協会が表彰する「エネルギッシュ・タウン―私の街―」は、平成17年度で第6回目を迎え、昨年11月8日に東京商工会議所でその表彰式が実施されました。今年度は、江戸の五街道のひとつである甲州街道をテーマに京王電鉄沿線の商店街から選びました。表彰式に続いて、今年度は受賞4商店街の理事長をパネラーに迎え、パネルディスカッションを開催しました。ここでは、4商店街の活性化への取組みについてパネルディスカッションの内容からご紹介します。
● 笹塚十号通り商店街振興組合(表彰)
(理事長 下嶋倫朗 様)
京王線笹塚駅から甲州街道を挟んで北側に立地する笹塚十号通り商店街には、幅4メートル、長さ250メートルの街区に65店舗が店を構えています。夕刻には買物袋を下げた主婦が溢れて歩けないほどの混雑です。40年も前の商店街が再現されたと錯覚されます。
このように来街者が溢れている成功要因はなんでしょうか。その一つが、高齢者に発行している「思いやり手形」です。これは、65歳以上であれば、住所に関係なく誰にでも入会金・会費が無料で発行されます。この手形を見せれば、商店街でいろいろな特典が受けられます。次に、毎年8月に実施されている「ちびっ子まつり」です。これは、多くのゲームを商店街の店主が協力して作成して実施しており、子供達には人気のイベントとなっています。更に、幡ヶ谷の周辺の商店街と共同で6年前に立ち上げた「ささはたドッとこむ」です。これは、10商店街、700店舗が加盟してインターネットによる総合的な地域情報の発信を積極的に行っています。これらの戦略が地域の生活者に支持され、前述のように毎夕には街区に人が溢れているこ状態が続いているのだと思います。
● 仙川商店街協同組合(表彰)
(理事長 塚本憲一 様)
京王線仙川駅の真上を交差して立地する仙川商店街は、北は甲州街道、南は桐朋学園前のバス通りまで、幅4メートル、南北約400メートルの街区に約200店舗が店を構えています。この商店街の特徴は、街区を「ハーモニータウン」と命名して西友、クイーンズ伊勢丹などの大型店4店舗と地域の学生らとの共生を目指していることです。商店街と大型店が共生できている大きな要因は、何と言っても商店街が運営する約1千坪の大駐車場であり、年間9千万円の収入を確保し、商圏を拡大して大型店と共生を果たしているからだと思います。
特筆すべきは、毎年8月に実施される「おらほ仙川夏祭り」です。地元の桐朋学園大、白百合女子大の学生も協力しており、中元・歳末売出とともに来街者には大好評のイベントです。この祭には、浅草サンバカーニバルの優勝チーム、地域住民によるチアリーディングなどもあり、毎年3日間で3万人もの集客があります。さらに、11月に開催される「おらほ市」は、子供向けのイベントに大型店が協力しています。このように、仙川商店街の成功要因は、大型店と学生、さらに地域生活者も巻き込んだ「共生」の成果であると思われます。
● 晴見町商店街振興組合(表彰)
(理事長 大堀隆康 様)
京王線府中駅から北に徒歩15分、旧公団住宅府中グリーハイツに隣接し、周囲を府中刑務所、学校、工場などに囲まれているのが晴見町商店街です。昭和35年に公団住宅が建設されたのと時を同じくして、自然発生的に商店街が形成されました。近隣には、大型店もチェーン店もなくL字型の街区は全長700メートル、会員数は65店で、30店が生鮮店などの物販店、20店がクリーニング・飲食店などのサービス店です。これをみても最寄品中心の典型的な近隣型の商店街であることが伺えます。
この商店街の特徴は、食料品店を覗くと、取扱商品のそれぞれに「豚ヒレ肉100グラム115キロカロリー」というようにカロリーを表示していることです。また、1回の食事に摂取する必要な栄養のバランスを表示してある店もみられます。これらのカロリー表示などを指導しているのが商店街にある「医王病院」と保険所の栄養士の方々です。また、毎年10月に開催される「ふれあい祭り」の抽選会の参加者を見ると65%が半径500メートル以内に集中しているのをみてもうなずけると思います。このように晴見町商店街の成功要因は、病院を核として立地を活かした「地域密着型」の戦略であると思われます。
● 明大前商店街振興組合(特別賞:地域連携賞)
(理事長 本杉 香 様)
京王線と井の頭線の明大前駅周辺に立地する明大前商店街は、平成9年に4商店街を合併して286店で形成されました。明大前商店街の特徴は、何と言っても「元祖安全安心商店街」としての徹底した防犯活動です。
商店街のある世田谷区松原地区には交番がなく、管内では空き巣と引ったくりのワースト1地域となっていました。また、地元小学校では痴漢の被害が多発していました。そこで、商店街としては地元住民の協力を得て地元警察署に働きかけ、自警会(愛称「明大前ピースメーカーズ」)を結成し、駅前に組合事務所を兼務した「民間交番」の「ピースメーカーズボックス」(MPB)を設置しました。MPBを拠点としたパトロールは43人で、商店街関係者とポランティアで構成されています。この「民間交番」に関しては、全国から問合せが殺到しています。これが、明大前商店街の活性化への成功要因だと思われます。
今回は、4つの商店街の活性化への取組みについてご紹介しました。最後に感じたことは、ぞれぞれの商店街が自分の「強み」を活かした戦略を展開していることだと思います。それが、商店街の個性発揮に繋がり地域生活者から支持された結果であると思われます。