第3回「販売士討論会・交流会」開催報告
東京販売士協会会員 齋藤 利行
東京販売士協会常任理事 財津 永量・菅原 資子
平成17年10月22日(土)東京商工会議所301特別会議室において第3回「販売士討論会」を開催いたしました。今回は販売士自身の自己研磨と社会的認知度の向上や自己実現活躍の場作り等を狙いとして行われ、「討論会」というより「発表会」形式で販売士自身が、現在実践中の興味ある内容を盛り沢山披露してくれました。
当日は18名の参加者があり、小柳会長の挨拶に続き、司会・進行(財津・安則)のもと、各発表者が順次内容説明を行いました。各テーマの内容は以下の通りです。
1.「これからの商売に無くてはならないもの」(財津)
(1)IT革新(ハード面)(2)マインドコミュニケーション(ソフト面)(3)「間」と「遊び」を持つ(ハート面)
・商売とは相互情報の「発信」と「交流」であり、お互いが認めあい、納得しあって商売を行うことが大切。
(1)IT革新
・ 社会環境の急激な変化、価値観の多様化“重厚長大→軽薄短小(ダウンサイジング時代)”といった風潮の中で、カード化時代、キャッシュレス化時代、インターネット普及時代を迎えようとしている。これからは情報収集力、情報選択能力、情報処理能力が決め手となる。
<背景となるマクロ環境>
・ 地方の時代、民間委託(PFI法)、グローバルな商取引・国際交流、環境保護(省エネ・省資源)、ボランティア活動の普及、安全・衛生管理(リスク管理)・社会性・公共性の尊重
・ 利害関係者との共存・共生・棲み分け・・・これらを踏まえてIT戦略を設定する必要がある。
(2)マインドコミュニケーション
・ 相手との心の触れ合いの中で、お互いを引きつけるものに「輝き」と「爽やかさ」(爽快感)がある。
・ 「輝き」とは、存在感の発信(人とのやり取り)であり、小売5P(商品・サービス、チャネル(マーチャンダイジング)、価格、販売促進、立地・店舗)のうち、どれでもいいので、自分なりの際立つものを特化して、持ち味を発揮させることが重要である。そのためにSWOT分析を徹底して、戦略の構築に役立てていく。
・ 「爽やかさ」には、対人コミュニケーションの工夫が必要である。相手に喜んでもらえることとして、「真心、思いやり、共感」この3項目が挙げられる。 その他に「買って喜び、売って喜び、作って喜ぶ」という「三つの喜び」もある。存在感を持ち価値ある情報を発信・交流し得る人材が時代を引っぱっていく。
(3)「間」と「遊び」をもつ
・ 「間」と「遊び」はゆとりをもたせ、気持ちを和ませる効用が期待できる。またこうした「癒し」が次の発想展開や活力を生む。
2.「中小小売業におけるPOSデーター活用モデルの概要」(岸本)
・ モデルの目的はRDS(流通POSデータサービス)を活用した、中小小売業における経営改善の可能性に関する研究である。内容としては、(1)小売業を支援する機関(支援機関)に協力を要請(2)1支援機関ごとに5店舗程度、調査研究に協力する個店を募集し、RDSを提供(3)支援機関から、経営指導員などの専門家を派遣し、各種データ分析に基づき、経営改善を指導(4)派遣専門家によりデータの活用効果を分析し、その結果をもとに有効性を分析する。以上を踏まえた上で「食品スーパーにおける日用雑貨売場」「売れ筋商品導入の効果」の2つの事例説明があった。
・ 説明は10数枚のスライドで行われ、個々の掘り下げられたデータ分析をもとに各パッケージごとに説得力のある内容であったが、詳細については紙面の都合でここでは省略したい。販売士が個店の運営指導を行う場合に強力なツールとして役立てられる画期的な内容であった。
3.「ホテル予約システム」「ETCの一般駐車場の応用」(富沢)
両システムとも東芝プロセスソフトウェアで開発しており、ITを活用した新たなビジネスモデルである。
・ 「ホテル予約システム」
キーワードは「情報のオープン化、共通化」である。このシステムの目的は自社ホームページの提供分と「RoomAgency」提携予約サイト・企業向け提供分を共通在庫化することで宿泊施設管理の一元化、販売の効率化を図ることである。概略としては空室状況から予約登録まで最小4クリックでの予約を可能にする。手順として宿泊地、料金、人数、日数を入力すると該当する施設が一覧表示され、希望する施設を選択することが出来る。その他に会員登録された顧客の属性、予約実績から条件抽出をして、プロモーションメール送信によるプッシュ型の販売を実現する。このシステムのメリットは予約状況の確認、申し込みをする際、複数の宿泊施設に問い合わせる必要がなく、迅速かつ正確に手続きすることが出来ることである。
・ 「次世代ETCの一般駐車場への応用」
キーワードは「キャッシュレス」である。目的は現状の高速道路用ETCの仕組みを利用して、次世代のETCサービスとして、一般駐車場への応用を実現する。概略はあらかじめ車が搭載した車載機と駐車場に設置されている路側機が、データを相互通信し認証作動を行う。正常に認証された場合ゲートが開き、駐車場へ入ること出来る。駐車場を出る場合、駐車時間に応じた料金を自動計算し車載機に送る。メリットは利用者は現金を支払うことなく駐車場を利用出来ることである。
4.「一般酒販店におけるMD戦略~新取引制度開始元年~」(有年)
・ 価格設定方法に「7つの選択」(マークアップ価格設定、ターゲットリターン価格設定、知覚価値価格設定、バリュー価格設定、現行レート価格設定、入札価格設定、心理的価格設定)がある。
・ 今、卸は、断続的な取引を行う為、コストオン方式である。
・ 納入価格が安くなる方法として、注文は電話よりFAX、専用FAXさらにはEOS、WEBが安くなる。発注単位は出来る限り、バラよりケース単位の方が安くなる。先方のルール(事前連絡、時間帯等)を遵守さえすれば、配送よりも引取りの方が安くなる。さらに配送時の時間指定、多倉庫卸はコストオンとなる可能性が高くなる。
・ 卸ではなく、一般酒販店の対応としてはPrice (価格)、Place(場所)、Promotion(販売促進)、Product(商品)+Service(サービス)のようなMD 戦略が考えられる。さらには最近、特に重視されつつある「サービス」があり、サービスは商品そのものではなく、「商品を購入することで得られる付加価値」である。
5.「神奈川販売士協会の状況について」(神奈川販売士協会会長 谷口雅春氏)
今回は販売士同士の研鑚交流として、2004年に発足された神奈川販売士協会の方々が本討論会に参加されました。神奈川販売士協会会長の谷口氏からは協会設立までの経緯や今後の事業活動やイベントの説明をお話しして頂きました。今後、販売士同士の横の連携を図る上でも有益な情報交流に寄与する事が出来ました。
討論会は予定通り盛況に終了し、引き続き行われた交流会は木村理事の乾杯に始まり、お互いを良く知り合う和気藹々とした交流(自己紹介、感想)が見られ、最後に木下監事のー本締めにて終了しました。今回は通常の討論会と変え、「(ミニ)レクチャーミーティング゙」に焦点を定めた販売士討論会でしたが、時間が足りないぐらいの発表で、実体験を通して大変中身の濃い内容でした。
参加者の感想の中には、「色々勉強になって大変良かった!」との声が多くあり、特に、「若い販売士の人達に研修の機会を提供して、みんなが出番だ!といった「販売士劇場」に仕立てることが大切だ。」といった有難い意見がありました。
<HAPUの会(販売士のパワーアップを図ろう会)今回出席のメンバー>
財津永量・菅原資子・安則久雄・岸本徹也・富沢英之・有年義彦・齋藤利行