販売士向け特別付録(スマートフォン普及の動向~オムニチャネルなど)

「販売士」向け特別付録(スマートフォン普及の動向など)

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「オムニチャネル」の関連書籍や資料

 

「スマートフォン」は、奥谷氏の講演からも「オムニチャネル」に果たす役割として中核に位置づけられるように、現代の私たちにとって急速に身近なデバイスになりましたよね。

 

リアル店舗側の「販売士」は、デジタル側の動向に触れてなかった人も多いと思いますので、ここでちょっと簡単に時系列をまとめてみました。

スマートフォン普及の動向(奥谷氏の動向付き)」まとめ / オムニチャネル 
スマートフォン普及の動向(奥谷氏の動向付き)」まとめ

年度別に出来事をプロットしていくと、前述した「顧客接点のチャネル」で3つの時代に分けられそうなので、便宜的に各時代を線引きさせていただきました。

※線引きとしては諸説あるかと思いますが、ここでは簡易的に理解を促す為のものとして捉えていただければ幸いです。

m(_ _)m

 

◆シングル~マルチチャネル時代

(あの「Windows97」の発売フィーバーから、2017年でもう20年なんですね。笑)

・・・この「シングル~マルチチャネル時代」の移行期は、インターネット黎明期と重なる時期かと思います。

前OSの「Windows95」の発売で、インターネットが急速に普及した1995年には、米国で「Yahoo.com」や「Amazon.com」が誕生していましたが、日本のEC業界は「楽天」が1997年に創業した翌年に、カメラ系量販店の「ヨドバシカメラ」も早々にEC参入を果たしていました。

2000年11月には、もう日本ではお馴染の「Amazon」が現代の黒船として鳴り物入りで日本でサービスを開始します。

 

・・・この「インターネット黎明期」で混沌とした中での「リアル店舗」側の大きな動きとして、日用品世界最大メーカーの「P&G」社が大規模な消費者調査からの帰結を、2004年に「FMOT」という概念を提唱したことが挙げられます。

店頭に訪れた消費者は、陳列商品を見て3~7秒で、その商品を魅力的か判断する

このショッパーの真実の瞬間を「First Moment of Truth(FMOT)」、購入後(ユーザー)の態度形成を「Second Moment of Truth(SMOT)」と定義して、リアル店舗側も活気づいていきます。

◆クロスチャネル時代

人類史上でも指折りの発明であろう、「初代iPhone」が2007年6月に発売され、電話の再定義に留まらず生活者の行動様式まで一変させることになります。

スマートフォン」の登場ですね。

スマホの普及を後押しするように、「Twitter」や「Facebook」も2008年に日本でサービスを開始して、その勢いに拍車をかけました。

その後の爆発的な普及で、「オンライン」を文字通り手にした消費者は、リアル店舗で商品を確認した後に、ECから最安値で購入する行動(ショールーミング現象)に至り、大きく問題視されていきます。

「ショールーミング現象」でリアル店舗側は苦境に立たされますが、Google社は追い打ちをかけるように、2011年には「WINNING THE ZERO MOMENT OF TRUTH ※PDFデータ」というタイトルからして挑発的(?)なレポートを発表。

 

ここで新たに「ZMOT」の概念を提唱します。

Google社「ZMOT概念図」/ スマートフォン / オムニチャネル
Google社「ZMOT概念図」(Google社の上記レポートより引用)

 

2004年にP&G社が提唱した「FMOT」は、スマートフォンの登場により新たに上書きされてしまいました。

Google社は「スマホ後」の消費者は、様々なメディア情報の刺激(Stimulus)と共に、能動的な検索行動やユーザーの使用体験(SMOT)をSNSのクチコミ等からも情報を得るので、「FMOT」の前で購買の意思決定に強く寄与していると喝破。

スマホの登場により、「ショールーミング」や「ZMOT」と購買行動は大きく変容していく中で、伝統的な小売業は苦境に立たされます。

Google社が「ZMOT」提唱した同じ2011年、米の老舗百貨店「Macy’s」は「オムニチャネル化」を宣言。

 

◆オムニチャネル時代

日本でスマートフォンが一般的に定着した2012年の秋頃から2013年にかけて、デジタル/プロモーション領域では「O2O(オーツーオー/オンライン ツー オフライン)」がバズワード化していました。

大まかな意味としては、「オンライン(ウェブ)からオフライン(リアル)へ誘因する施策」として捉えられ、様々なポイントサービスや位置情報によるプッシュ通知など、デジタル/プロモーション領域では様々な手法が多様化して用いられます。

そのような気運の中で、小売大手のイオンさんは初の各種デジタルサービスを売り場に導入した、モール型の旗艦店「イオン幕張新都心店」のオープンを、2013年12月20日に控えていました。

「モノ・コト・ネットの融合」を掲げ、ICTを駆使して新しい買い物スタイルの実験的な試みが始まろうとしていた矢先に、ある事件(?)が起こります。

 

なんと、2013年12月16日、同じく小売り大手のセブン&アイさんが、日経新聞紙上で「オムニチャネル宣言」として、2ページ見開きの広告を掲出。

セブン&アイ「オムニチャネル宣言」の広告
セブン&アイ「オムニチャネル宣言」の広告(引用:東京IT新聞様)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この一件は、「オムニチャネル」が日本の小売業界を始めとしたビジネス界で周知される契機になったと言えるでしょう。(前述した検索ワードの流通量新聞記事での取り扱いを見てもこの広告掲出とほぼ一致します。)

「オムニチャネル時代」の到来です。

 

その下地としては、2013年から発表された、野村総合研究所(NRI)さんなどの各シンクタンクのレポートも、空気感の醸成に寄与していたでしょう。

参考までに、下記は各所で引用された2013年5月のNRIレポート「オムニチャネル・コマースの実展開に向けて ※PDFデータ」からの抜粋ですが、当時はまだ「業界の最新トピック的なバズワード」として認識されていたかもしれません。

NRIレポート「オムニチャネル・コマースの実展開に向けて」
※画像引用:NRIレポート「オムニチャネル・コマースの実展開に向けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

NRIレポート「オムニチャネル・コマースの実展開に向けて」
※画像引用:同上

 

 

 

 

 

 

 

その後も、スマートフォンの攻勢は留まる様子は無く、イオンさんが「格安スマホ」を投入して大きく話題になった2014年には、インターネット利用端末としてスマートフォン(42.4ポイント)がガラケー(24.5ポイント)を超えた(総務省:情報通信白書 平成26年度調べ)初めての年となりました。

平成28年度調べで既に肉薄している「パソコン」にも、平成29年調べで始めてスマートフォンが超える可能性が濃厚です!)

 

また、2016年の世帯携帯電話普及率(内閣府:消費者動向調査 平成28年度調べ ※エクセルデータ)では、初めてスマートフォン(67.4ポイント)がガラケー(64.3ポイント)を初めて超えたりと、ますますスマートフォン普及の動向から目が離せなくなってきたのが、現在地点(2017年の年頭)といったところでしょうか。

 

・・・そして、今回ご講演でお話していただきました奥谷氏の講演最後のスライドを再掲しますが、「日本の第一人者が到達したオムニチャネル時代のひとつの最適解」として、この章を終わらせていただきます。

「オムニチャネル」まとめ
奥谷氏「オムニチャネル時代のマーケティング戦略」最終スライド

 

 

おわりに

リアル店舗側の「販売士」は、デジタル領域に対しては「触らぬ神に祟りなし」ではありませんが、なかなか触れる機会が無く苦手意識(?)を持ってらっしゃる方は多いかもしれません。

奥谷氏は、講演で「Technophobic Culture(≒ITへの不信や煩雑化する恐怖)」と何度か言われていましたが、少しづつ理解を深めながらこの意識を払しょくしていくことが、「オムニチャネル化」への入り口になるのかと私は感じました。

 

・・・このエントリをお読みになって「具体的な事例」が欲しかった方には少々物足りないかもしれませんが、奥谷氏が様々な事例や背景から本質を抜き出したエッセンスなので、自然と「抽象的な概念」に収れんされています。

「戦略」あっての「戦術」で、この関係は不可逆性にあります。

事例をチョイスしてインスタントに「劣化コピー」しても、今時の生活者は行間からにじみ出る「違和感」をすぐに感じ取るので、自社や自分のケースに当てはめて真摯に向かい合うのが、結局は近道ではないでしょうか。

 

巻末の付録では、今回のセミナーを機にデジタル領域についてもっと知りたい!といった前向きな方向けに、奥谷氏の動向と共に「スマートフォン普及の動向」を簡易的にまとめたので、「販売士」や「小売関係者」様の一助になれば幸いです。

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

 

これからも、東京販売士協会をよろしくお願いします。