会員のための交流・親睦会

第5回「販売士討論会・交流会」開催報告

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東京販売士協会常任理事 財津 永量

日 時
平成19年10月27日(土)午後1時~4時40分
場 所
東京商工会議所 特別会議室S (東商ビル4階)

参加者は計21名で盛況。司会のスムーズな進行で総ての発表は時間どおり行われた。2時間10分の予定で4テーマの発表は若干急ぎ足の感もあったが、内容の濃い充実したものであった。「これまでにない成功であった。」との感想多く聞くことが出来た。富沢氏の司会により、新しく参加された6名の簡単な自己紹介の後、大島会長にご挨拶をいただいた。9月にフロリダ視察をされ、アメリカの経済状況(住宅ローン、サブプライムロン)や、景気(ショッピングセンターでは物価が高いが、飲食店ではサービスが良い)のお話しをお聞きした後、討論会へと進んだ。

1.「実践!コミュニテイビジネスの支援」-販売士活動の場づくり、チャレンジショップの展開支援-

講師 武井 昭 氏

(1)コミュニティビジネスとは
(2)チャレンジショップへの支援
(3)チャレンジショップの内容、チャレンジャー、店舗
(4)具体的な指導内容、研修など
(5)成功した事例、撤退したケース
(6)指導に当たっての問題点
(7)支援体制
(8)1級販売士活躍の場

武井昭氏は、8年程前からNPO法人を立ち上げ、地域や社会の「コミュニテイ活動」を支援している。これは、東京都でNPO法人を立ち上げ、足立区(北千住)でチャレンジショップを支援し、商業に全く経験のない人が実際の店舗を持つ前に、一定期間空き店舗を利用して行う研修システムである。若い男女がインデアンジュエリー店やビーズ店、洋品店を運営し、月2回閉店後、簿記の知識や、顧客台帳の管理・作成、金融機関からの融資受け入れ方法や、不動産交渉の仕方の研究をしている。(この間に3級販売士資格を2名が取得。)
約7割の人が経営に成功している。出来るだけ他所の視察や過大な投資はせず、最初は儲からないが継続することでノウハウを蓄積している、ことが挙げられる。
武井氏は、このコミュニティ活動は1級販売士(流通業唯一の公的資格)の販売士としての経験・知識を活かし、商業コンサルタントとして活躍出来る期待の場として推進している。

2.「メーカーの新しい派遣システム」-商品アドバイザーのあり方、進め方-

講師 大橋 秀通 氏

<商品アドバイザー(家電ヘルパー)とは>・・家電メーカーの社員または派遣社員が家電量販店内に駐在し、消費者に直接自社の商品説明を行い、販売活動を行う業務。

●メーカーから見た長所・・・
(1)自社の売りたい商品を直接、消費者に奨めることが出来る。
(2)自社の販売占有率を高めることが出来る。
(3)消費者と直接接することで生の「消費者の意見」を新商品に役立たせることが可能になる。
(4)余剰人員の“調整弁”(雇用の継続)とすることが出来る。

●消費者から見た長所・・・
(1)メーカーの人間から直接説明を受け、詳しい商品内容を知ることが出来、商品選びがスムーズに行なえる。
(2)メーカーに対して直接要望・不満を伝えることが出来る。

●短所・・・
(1)メーカーは自社の商品しか奨めないため、押し付け販売となる傾向にある。
(2)“(1)”によって消費者はストレスを感じ、メーカーへの不信感を生むだけでなく、買い物気分も害する。

●今年になって起こった問題・・・
量販店が直接雇用関係にない派遣社員に対して 「指示命令」をしていた。その為、一部有力家電量販店では派遣社員の受け入れを「中止」し自社従業員のみで運営したが、詳しい説明ができなくなり、家電量販店は「デイスカウント店(ただ販売するのみ)」になってしまった。

●今後のあり方・進め方・・・
(1)商品アドバイザー(家電ヘルパー)は消費者と販売店間の潤滑剤としての役割でなくてはならない存在であるとの認識が必要。
(2)また、家電量販店に対しても「販売員」を育てる「先生」の役割を果たす存在。その為、メーカーと家電量販店がコンプライアンス(法令順守)を徹底して正しい運用を行う必要がある。

●正しい運用とは・・・
(1)家電量販店の「従業員」と「家電ヘルパー」の区別を明確にして、消費者に対し正しくアピールをする。
(2)家電ヘルパーは、消費者に対して正しい商品選びを助ける説明員に徹する。
(3)メーカーが責任を持って、家電ヘルパーの「監督」をし、常に消費者の気持ちを忘れない。

大橋秀通氏は、以前ビッグカメラから東芝の派遣会社へ、その後経理担当をし、現在、経営企画部で活躍中です。その経験を活かし、上記の「メーカーと家電量販店」が連携する潤滑的役割である「家電ヘルパー」のあり方について発表された。

3.「日本のスーパーマーケットのアンケート調査」-戦略グループの分析、優秀企業と下位企業の比較-

講師 岸本 徹也 氏

岸本徹也氏は、平成18年10月から19年2月にかけて日本のスーパーマーケットに実施したアンケート調査、およびアメリカNY州スーパーのインタビューデータをもとに発表された。そして次の点を力説された。

●最近スーパー業界では、個店主導か本部主導かが論議されている。どちらかといえば地域密着型の個店主導が重視されているようだが、アンケート調査結果から見ると成果を上げているスーパーは、個店主導を強めながらも、同時に本部の店舗支援に力を入れている。また、スーパーというと短期の販売促進等のマーケテイング面が取り上げられることが多いが、優秀企業は、その背後の仕組みづくりを確実に行っている。
アンケートでは、販売面での差というより、背後の仕組み(教育、設備の標準化、スーパーバイザー等)を構築しているかどうかが優良企業と、そうでない企業を分ける軸のようである。

●そこで販売士はスーパー経営から何を学ぶべきか。
○セルフサービス主体のスーパーマーケット経営では、販売員のモチベーションを高める必要があるのは専門店等と同じく重要性は高い。
○華やかな販売面だけでなく、その背後の見えない仕組みにこそ本当の強さがあり注意を向ける必要がある。

その意味で今回、販売士試験に新たに加わった「ストアオペレーション」は重要で、そこにはチエーンストア経営の内容が主体となっている。留意すべきことと考える. <発表まとめ>アンケートの回収率15%。営業利益が上昇している理由。スーパーマーケットには個店主導、本部主導、地域主導等がある。
(1)NB(ナショナルブランド)製品・低価格製品の展開、生活提案商品の関連、陳列、店舗ごとの品揃え(どの企業が有利であり、どのような戦略を図っているのか?)。
(2)優良企業と下位企業との差にどの改善の効果が出ているのか?
(3)店舗運営業務ポイント、販売計画ポイント、人事の能力変数、教育訓練変数、店舗改善政策等の標準化ポイント、店舗設備の標準化ポイント、SV(スーパービジョン)変数などどの戦略効果が高いのか?などが説明された。

「これからの小売販売と販売士のあり方」
-キラリと光る「輝き」と「爽快感」が決め手-
-IT進展の明暗(流通犯罪)「リスクマネジメント」の重要性と留意点-

講師 財津 永量 氏

●「輝き」とは自分の存在感。「爽快感」とは人と人とのコミュニケーション(真心、理解、思いやり、)すること。また、「買って喜び、売って喜び、作って喜ぶ」の三つの喜びが大切である。
事例としては、浅草地区の商店街区や北千住地区の商店街区の共棲・共販事例が話された。(この店ならではの魅力の発揮とコミュニテイ集客力)次に消費者の4つの権利(知らされる権利、選べる権利、意見を述べられる権利、安全な権利)を挙げ、販売士や誰でもが銘記すべきことであるとした。
●ITでは、現在急増する流通犯罪が、(1)「企業を取り巻くリスク」と(2)「情報認識・関心度チェックシート」の具体的事例をもとに話があった。例えば、社内物品の盗難(特にノートパソコンや販促景品等)、大手の某商社が銅取引で18億ドルの損失、金券などを金券ショップで換金し着服、個人の借り入れの担保として会社の有価証券を差し入れ、期末棚卸時に会社小切手を無断で振り出し証券を回収してつじつまを合わせた、などの事例が取り上げられた。
現在でも建築関係での強度偽装や、「白い恋人」「赤福」、や鶏肉等の食品関係の不当表 示が世上を騒がしているが、中小企業を取り巻くリスクの中にあっては、常に「虫の目」 「魚の目」「鳥の目」で注意深く出来事をウオッチしながら対応していく必要がある。

以上のとおり15時40分予定通り討論会が終了し、次いで交流会へと進行した。 木下博民監事の乾杯挨拶に続き、各新人からの挨拶や意見交換等、お互いのコミュニケーションが活発に行われ、次回への参加を約すなど、大いに盛り上がって充実した内容で予定どおり終了した。

<了> ―(記) 齋藤 利行・財津 永量―

<第5回販売士討論会アンケート結果>

討論会よかった普通余りよくなかった
●企画について1440
●内容について1250
●時間について936
●実施日について土曜・日曜が良い 15
平日が良い 2

●参加したい企画(1)商業施設視察 6 (2)講演会・セミナー 11 (3)能力アップ研修 7 (4)パネルデイスカッション 2 (5)会員交流会 6 (6)その他 0
●参加者意見 (1)よく出来たイベントだった。(2)来年も楽しみにしている。(3)先人について、今少し学ぶべきだと思う。(4)内容が大変良く、発表者の説明も判り易く、全体に満足した。(5)販売士の優秀さを改めて認識した。(6)名簿を配布し、話しかけるきっかけを作って欲しい。
●良かった点
改善すべき点
(1)内容はユニークなものがありよいが、時間が多少すくない感じ。 (2)販売士研修的先取り内容で充実感ある内容だった。 (3)勉強になった。 (4)3の分析・調査の発表は面白く、もう少し詳しく聞きたかった。
●具体的テーマなど (1)参加する人が限られている。今後底上げが重要。 (2)経済・景気見透し、老舗のノウハウ、販売士が活躍する企業の紹介等。 (3)企業に大切なリスクマネジメント(コンプライアンスも)をもっと勉強したい。
●その他意見 (1)1の話に出て来た販売士の活用・地位向上のため、日本商工会議所や中小企業庁など行政と連携を強めて行きたい。 (2)テーマを絞って対話形式に。