先進商業施設視察会

平成19年度商業施設「アトレ品川店&エキュート品川」見学会報告

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東京販売士協会 常任理事 上野 擴

1987年に国鉄が民営化してから既に20年、JR東日本は1日の乗降客1,600万人超を経営資源とみなして、生活サービス事業の一環としての「流通事業」に積極的に乗り出している。
JR東日本は、2000年に「ニューフロンティア21」という中期経営計画を策定し、その中で「ステーションルネッサンス」を提唱した。すなわち人口減による乗降客減を、駅を中心とする生活サービス事業でカバーしようという構想である。
現在では「鉄道事業」「生活サービス事業」「スイカ事業」が三本柱の原構想である。鉄道事業は言うに及ばず、スイカ事業はフェリカ方式による改札の非接触型改札券であると共に、今やエディ(発行会社ビットワレット社=ANA、ローソンなど加盟)と並び称する電子マネーとして、約2,230万枚(2007年9月現在)、22,500店舗(同)が加入し、加盟を前提とした関東私鉄(PASMO)や、JR東海(TOICA)、JR西日本(ICOCA)などと連盟する鉄道の通行券並びに電子マネーとして存在感が日増しに重みを増している。そして「生活サービス事業」の中核をなすのが、今回見学したエキュートでありアトレである(図1参照)。

アトレ品川&エキュート品川見学会写真1

エキュート物語図1

エキュート物語図1

ご覧の通り、「エキュート」はエキナカ・ビジネスであり、「アトレ」はエキナカと街中の中間に位置する存在で、各々運営企業の概要については表1をご参照いただきたい。

アトレエキュート
運営企業名東京圏駅ビル開発株式会社株式会社JR東日本ステーションリティング
代表者今木 甚一郎鎌田 由美子
資本金1,630百万円480百万円
設立1990.4.22003.9.12
事業目的または事業内容JR東日本との駅ビル共同開発
駅ビルの管理運営
直営店の運営
駅構内開発プロデュースおよび運営受託
駅構内における商業施設の運営および開発
衣料品・食料品・雑貨品等の販売
店舗等の管理および運営
店舗数と主な店舗
(H20.1.1現在)
SC:15店舗
アトレ品川、恵比寿、大森等
運営受託:3店舗 Dila 西船橋、大船、拝島
直営店:14店舗
シャン・ド・エルプ、恵比寿、品川等
3店舗
品川、大宮、立川
名称の起源フランス語「魅力」
(ATTRAIT)より
[Eki][Center][Universal]
[Together][Enjoy]の造語
「駅を中心にあらゆる人々が集い楽しむ快適空間」
「楽しいことがキューっと詰まっている駅」

アトレなど駅ビル・百貨店開発は、1990年にJR東日本より独立し、多くのSC(ショッピングセンター)や運営受託と直営店をもっている。一方エキナカ・ビジネスである「エキュート」は、2004年(平成16年)に設立し、平成19年10月には第3番目の店舗「エキュート立川」を立ち上げた。その位置付けは、駅に快適な空間を作り出し、駅を利用するお客様に付加価値を提供する「駅構内開発小売業」としてスタートしている。即ち、運営者自らが「営業の主体性」を持った運営形態であり、駅の概念を変え、既存の仕組みを変えることによって、駅の魅力向上を目指すものである(詳細は図2を参照)。

エキュート物語図2

エキュート物語図2

また、今回見学の「アトレ品川店」「エキュート品川」については(表2参照)、2004年、2005年に各々オープンした。ターゲットは20~30歳代の男女としている。品川駅は、平日でJR50万人、京浜急行25万人、新幹線5万人で、延べ約80万人が利用している。港南口(駅南口出口でアトレに面する通路)を利用する客も、延べ約30万人(休日8万人)という。その膨大なパワーを最大の武器に両SCは存在するとともに期待の売り上げを達成している。

アトレ品川エキュート品川
コンセプト運営コンセプト:
ニューヨークスタイル(洗練、上質、本質)
プレミアム・プライベート
ターゲット20~40代20~30代男女
SCの売上7,085百万円(2006年度)
開業2004.3.32005.10.1
SC階数地上3階2階
店舗数2F:9店舗、3F:2店舗、4F:11店舗1F:34店舗、2F:12店舗
店舗面積5,120m2
延べ床面積13,99025,3002
特記事項支払:電子マネー(スイカなど)、クレジットカードアトレカード保持者60万人で、売上比率17.2%
利用者の平均年収が高い
商圏は、一次商圏とその他商圏に属し、前者はオフィス需要、後者は観光など旅行者需要
支払:電子マネー(スイカなど)、クレジットカード
配送サービス:JR東日本エリア、北陸3県、中部4県には500円宅配
入店者:リーシングでコンセプトに合致の指名業者

さて、東販協では毎年ET事業(エネルギッシュ・タウン表彰事業=活力ある商店街を表彰)を実施しているが、平成18(2006)年度に旧東海道沿線の商店街調査を行った。今回見学したJR品川駅周辺でもいくつかの商店街を見てきたが、品川駅港南商店会などは飲食・レストランを中心とした店舗の集積であり物販の店舗は少なく、時間があればアトレ、エキュートと対照してご覧頂けると今回の視察会の意義が出てくるであろう。
今回の見学会は欲張って上記2つのSC見学を同日に実施した。参加者は16名。午前10時からアトレの会議室において、アトレ係員から25分、エキュート担当者25分の説明を頂き、設立コンセプト、施設の概要と現状などを伺った。その後、アトレ店舗を説明を受けながら見学し、エキュートについては自由見学を実施してから、12時30分アトレ4階のレストランにてアトレ関係者2名と昼食をしながらディスカッションを行った。30分の予定を超える活発な質疑があり14時前に解散した。

当日の参加者のアンケートによるご意見の主なものは以下のとおり。

◆1◆企画への意見

・昼食兼ディスカションは、リラックスして話に加わることが出来、大変よい企画だ。
・デベロッパーの話は大変参考になり、個人では判らないことを知り、見る目がすっかり変る。

◆2◆見学会そのものへの意見

・新しい発想に基づき話題を集めた施設・企画を今後も年に1回は見学したい。
・開業後1年くらい経った施設のほうが、計画と現実の差が解っていい。
・2ヶ所が一緒に見学できて、エキナカと駅外の比較ができ参考になった。

◆3◆今後見学したい場所など

・イオンORヨーカドー、銀座、ミッドタウン、テスコ・イクスプレス、ダイアモンドシティ